『新・人間革命』第16巻 入魂の章 P108~
伸一は、行く先々で、喜びの種子を、向上の種子を植え続けた。それが大いなる全身の活力となるからだ。“どうすれば、皆が、元気になるのか。新来の柱となる力あるリーダーに成長できるのか。何があっても退転することなく、幸福への道を歩み抜けるのか・・・”伸一は、どこにあっても、そのことを真剣に悩み、考え続けた。
法華経の寿量品に、「毎自作是念」とある。これは、仏が常に衆生をいかにして「悟り」に導くかを考え、法を語り続けていることを説いたものだ。
仏法は自らの実践のなかにこそ、脈動する。自分は、常に何を考え、一念をどこに定めているかーーそこに、自身の境涯が端的に表れるといってよい。
仏法は自らの実践のなかにこそ、脈動する。自分は、常に何を考え、一念をどこに定めているかーーそこに、自身の境涯が端的に表れるといってよい。
伸一は、山梨、千葉、岐阜、滋賀、京都、福井にも激励の足を運んだ。山梨では、次の女子部を担う世代で「山梨読書研究会」をつくるように提案した。
伸一は、広宣流布の未来を盤石なものにするためには、女子部に力を注ぎ、育成していかなければならないと、強く感じていた。“21世紀は「女性の世紀」となり、あらゆる分野に女性が進出し、社会をリードしていくことは間違いない。また、一家の太陽となり、後継の子どもたちを育む、最大の力となるのも女性である。
それゆえに、優れた人格と知性をもち、聡明な女性リーダーに成長していくならば、広宣流布は、一段と大きな広がりをもっていくことになろう”
伸一は語った。「聡明な21世紀の女性リーダーとなっていくために、女性部は、まず教学を学び、何があっても揺らぐことのない、生き方の哲学を確立していただきたい。さらに、教養を身につけ、知性を磨くことが大事になる。それには、良書を読むことです。」
「戸田先生は、青年は『読書と思索をせよ』と叫ばれたと、戸田の訓練をなつかしく、思い出した。
伸一は、仕事も学会活動も多忙を極めていたが、電車の中をはじめ、どこにあっても、寸暇を惜しむように、古今東西の名著を読みあさってきた。彼の教養の基礎となったものの一つが、青年時代から、日々、懸命に積み重ねてきた読書であった。
「イギリスの思想家であるカーライルは、『書物の中には過去一切の精神が籠っている』との名言を残している。私も、良書こそ人類の最大の精神遺産であると痛感しています。」
伸一は、よく名言や箴言を引いて話をした。それによって、皆がその著者や作品に関心をいだき、読書をする契機になってくれればとの、思いからであった。時代の趨勢が、あまり読書をしない若者たちが増えていることを、彼は憂慮していた。
「優れた作品は仏法に通じることが多い。まずホール・ケインの「永遠の都」あたりから、初めてはどうだろうか。学ぶべき革命精神があるよ。」
「私たちは、最高の仏法をもっている。それを的確に訴えていくためにも、教養は大事だよ。毎日が勉強だ。生涯が勉強だ。」
山本伸一は千代田区の記念撮影会に出席した。千代田区は、戦後、学会の再建に着手した戸田城聖が、出版事業を再開し、日本正学館の事務所として購入した建物があった、「学会のふるさと」ともいうべき地域であった。
この三階建ての社屋に学会本部を置き、ここが、広宣流布の電源地となってきたのである。伸一にとっても、青春時代の黄金の思い出を刻んだ天地であった。
事業の窮地を脱する目途もたたない、万策が尽きたある日、どしゃ降りの雨に打たれながら「申し訳ございません。必ず、将来、先生に乗っていただく車も買います。広宣流布のための立派なビルも建てます。どうかご安心ください。」雨のなかでの師弟の語らいであった。
昼と夜の人口差が激しく、住民が減り続けるなか、千代田の同志は、自分たちが「学会のふるさと」を守り、発展させるのだと、誓い合い、真剣に学会活動に取り組んできた。
伸一は、記念撮影に参加する750人で「千代田区750人会」を結成することを提案。区外へ移った人の分区内のメンバーから補充して、常に千代田区の同志によって構成されるメンバーが責任をもち、原動力になるのだ。
この日、日本の中核たる千代田の新しき船出となったのである。
<入魂の章 終了>
太字は 『新・人間革命』第16巻より 抜粋