小説 新・人間革命に学ぶ

人生の 生きる 指針 「小説 新・人間革命」を 1巻から30巻まで、読了を目指し、指針を 残す

新・人間革命 第26巻

リーダーの在り方

『新・人間革命』第26巻 奮迅の章 332p~

「功徳を受ける信心について話をしておきます。一言すれば、まじめな信心の人には、必ず功徳があります。一方、外面は、一生懸命に信心に励んでいるように見せながら、実際には怠惰で、真剣に仏道修行に励もうとしない人には、功徳はありません。他人の目はごまかせたとしても、仏法の因果の理法は、決してごまかすことはできないからです。

また、恐るべきは、すぐに人を批判したり、ねたんだりする修正です。それは自分がこつこつと積み上げてきた福運を消すだけでなく、心を暗くし、生命を重くします。さらには、広宣流布の団結を破壊することになっていく。つまり、自分で自分を、不幸の淵へと追い込んでいってしまう。

反対に、人びとに対して、善意と称賛と応援の姿勢で臨み、仏道修行に励んでいくならば、感激があり、感謝があり、人生すべてを楽しいものと実感していくことができる。実は、そこに人間革命の姿があり、幸福の実像もあるんです。立場や役職のいかんが、幸・不幸を決するのではありません。

人生の勝負は、一年や二年では決まらないものです。一生です。したがって、決して背伸びをすることもないし、見栄を張る必要もありません。平凡でいいんです。どこまでも自分らしく、"折伏精神"をたぎらせ、地道に、淡々とわが使命を果たし、所願満足の境涯を築き上げていくことです。

特に支部長、支部婦人部長は、指導部の先輩と共に、丹念に一人ひとりと会い、励ましていってください。それが最大の仏道修行と思ってください。人を動かそうなどと考えるのではなく、まず自分が動くことです」

「支部の中心者だからといって、偉く見せようなどと考える必要はありません。ありのままでいいんです。私どもは、御本尊のもと、信心の血脈に結ばれた久遠の兄弟です。その大事な仏子である弟、妹の面倒を見て、立派な広宣流布の人材に育て上げていってください。そのなかに、自身の成長も、人間革命も、幸福もあると確信して、獅子奮迅の戦いを開始しようではありませんか!

伸一は、「支部制」を導入したからには、それが本格的に作動し、見事な成果をもたらすまでは、決して手を抜いてはならないと、深く心に決めていた。彼は、支部幹部の出発に際して、リーダーの在り方などについて、語っておこうと思っていた。

伸一は、「教学」と「信心」についての話から始めた。とともに、いや、それ以上に重要なことは、教学試験に合格できなかった人や、人材育成グループに入ることのできなかった人、実績がありながら表彰されなかった人などへの励ましである。

組織というのは、何かを行う時、どこかで"線引き"をしなければならない場合がある。大切なのは、該当しなかった方々への心配り、迅速な励ましを、リーダーは決して忘れたはならないということである。それを忘れれば、組織主義に安住してしまい、早晩、組織から人間性は失われ、冷ややかな官僚主義に陥ってしまうことになる。伸一は、そのことを深く憂慮し、断じてそうはさせまいとの思いで語ったのである。

伸一は、リーダーの在り方について語っていった。「支部というのは、依正不二の原理のうえから、自身の投影であるといえます。自分の生命の心音が、そのまま組織に脈動し、反映されていく。支部の発展、衰退は、支部長・婦人部長の一念の心音によって決定づけられていくことを、知っていただきたい。

支部幹部は、皆から好かれる人になっていくことが大事です。その根本要件は、一言するならば、誠実であることです。不誠実な人には、誰もついていきません。

では、誠実であるためには何が必要かーーそれは、まず、人の利点を生かそうとする努力を続けていくことです。また、後継を生かそうと、成長を願っているリーダーの真心は、伝わるものだ。二つ目に、約束は必ず守ることです。幹部になって多忙になると、"約束を守れないことがあっても仕方ない"と、思うようになってしまうことがある。それは間違いです。

組織といても、人間と人間の結びつきであり、その結合は、"信頼"によって成り立っている。"誠実"であることは、その"信頼"を育てることなのだ。



太字は 『新・人間革命』第26巻より 抜粋
0

全国に先駆けての杉並区方南支部結成大会

『新・人間革命』第26巻 奮迅の章 315p~

<奮迅の章 開始>

1978年(昭和53年)1月27日には、東京・杉並区の方南支部結成大会に出席するため、杉並文化会館を訪れた。伸一が東京の支部結成大会に出席することにしたのは、東京の、なかでも「山の手」の強化こそ、広布第二章の重要なテーマであると考えていたからだ。

草創期、学会は、主に下町方面を中心に広宣流布の拡大の輪を広げてきた。「山の手」は、家の造りからして門を構えた住宅が多く、ともすれば人間関係も希薄化し、弘教を推進するうえでも、何かと苦労があった。しかし、そこで、仏法流布の新しき道が開かれなければ、首都・東京の未来は閉ざされてしまう。

厳しい条件、大変な事態は、常に、どの地域にもある。唱題根本に、知恵を絞り、勇気ある行動で、そこに、広宣流布の大道を切り開いていくのが、師子の使命である。

27日の支部結成大会は、全国に先駆けての開催となる。伸一の出席いかんを問わず、その成否は、全国の支部に大きな影響を与えることになる。何事も初めが大事である。それが、一つの基準となり、目標となって、全体が続いていくことになるからだ。

杉並長の三枝木は、方面総ブロックの総ブロック長らの幹部に伝えた。「必ず大成功の支部結成大会にします」大会当日まで既に10日を切っている。しかも、29日には、任用試験が実施される。そのなかでの結集である。だが、皆が燃えていた。誰がどの人に会って連絡、激励するかなど詳細に詰めていった。

物事を進めるには、大綱が決まったら、一つ一つの事柄に対して、いつ、どこで、誰が、何を行うのかなどを、具体的に検討していくことが肝要である。活動の推進にあたって、あいまいさを残しておけば、そこから破綻が生じてしまう。こまやかな漏れのない対応、小事の完璧な積み重ねのなかに、計画の成就があるのだ。

会場の大広間は人で埋まった。伸一の導師で勤行が始まった。方南支部の「支部証」が支部長に手渡された。次いで支部歌の発表となった。たった4日で忙しいなか苦労して作ったので、2番までしかなかった。

草創の杉並支部出身の副会長の秋月英介があいさつにたち、草創の支部の強さは、各人が"一人立つ精神"に貫かれ、勇気ある実践を展開してきたことにあったと述べた。

組織は、出来上がっていたものではなく、自分たちが必死に動き、汗を流し、涙をぬぐいながら作り出していったものだ。そこには、皆に広布開拓の主体者の自覚があった。主体者となるのか、受け身の姿勢でいるのかーー実は、この見えざる一念のいかんが、広宣流布の一切を決していくのである。

山本伸一は、支部組織の意義に言及していった。「学会の支部は、本部の出先機関ではなく、その地域のために、そこで信心に励む人たちのために、本部と同等の責任と使命を担っていると、私は考えております。

組織体という観点では、学会本部が全国の中心かもしれませんが、自覚のうえでは、支部は地域における学会本部であると決めて、各人が地域に仏法を打ち立て、展開していただきたいと思っております」

「御義口伝」の一節を拝した。「私ども自体が、妙法蓮華経の当体であります。また、『足は経』とありますが、敷衍すれば、それは行動を意味するといえましょう。私たちは、今いる地を、深い因縁で結ばれた本有常住の国土ととらえ、"必ずこの地域を広宣流布するのだ!幸せの花園にするのだ!"と決めて、勇んで行動を起こしていこうではありませんか。その決意と実践がなければ、何十年と、そこに住んでいても、広宣流布は進みません。

広布第二章の今、さらに新しい、その心意気を、その気概を、その決意を、燃え上がらせていくための『支部制』なんです。名称や形式の問題ではありません」

「広宣流布といっても、どこか遠い、別のところにあると思うのは間違いです。自分自身のなかにあるんです。家庭のなかにあるんです。近隣の人びととの絆のなかにあるんです。創価の法友の輪のなかにあるんです。そこに、模範の広布像をつくるんです。

自身の足元を固めようーーこれが、最も強調しておきたいことです。足元を固めなければ、いかに組織が立派そうに見えても、結局、砂上の楼閣となってしまうからです。」伸一は、この方南支部結成大会の会場から、全国の支部長、支部婦人部長、そして全同志に訴える思いで話を続けた。


太字は 『新・人間革命』第26巻より 抜粋
0

勇将たちに芽吹く折伏精神

『新・人間革命』第26巻 勇将の章 300p~

御請訓には「この法門を申すには必ず魔出来すべし」と。支部発足から2か月後、有田の家の塀に、白いペンキで大書された。「有田よ恥を知れ」--学会を憎む何者かによる、卑劣な仕打ちであった。

報告を受けた伸一は、即座に励ましの手紙を書いた。「われらは、唯々、慈悲をもって戦っているのだから。人数の多くなる、少なくなる、これは全て御仏智なれば。願わくは、今こそ大信力をいだし、大御本尊様に願い、大勝利を期せられよ。大将軍らしく、悠然と全支部員の同志を励まし、指揮を執っていただきたい」

有田夫妻は奮い立った。「難を恐れたら、信心ではありません。功徳も、宿命転換も、一生成仏もありません。難に立ち向かい、挑み、戦う覚悟を、私たちは、絶対に忘れてはなりません。今こそ、勇気を奮い起こして、さらに、勇猛果敢に折伏に邁進していこうではありませんか!」法難が勇将をつくりだす。

男子部の有志が落書きを消すと言ってくれたが、有田は「このままにしておくよ。戦いを起こした誉の記念碑だからね!」と答え、この落書きを見ては、伸一の励ましに応えようと、広宣流布への闘志を燃やしてきたのである。

夫妻のもとで活動に励んだ青年たちのなかから、副会長ら幹部をはじめ、学術界や社会の分野で活躍する多くの人材が誕生している。人を育むものは、人の絆である。先輩幹部の一人ひとりへの真心、思いやりが発する、心の温もりのなかで、信心の滋養を吸収し、人材は育っていくのである。

奈良県北東部の宇陀郡榛原町を活動の舞台とする、榛原支部の丸沢邦代が支部婦人部長代表抱負を行い、先輩が、『支部員の皆さんに何かあったら、何をさておいても、その人のところへ飛んで行って、一緒に悩み、唱題して、すべて信心で解決してきたんですよ。無我夢中で一人ひとりを守り、戦ってきたんです』との言葉に"これが学会の強さであり、草創の精神だ"と思ったと語った。

伸一は、草創の支部幹部の精神は、広布第二章を担い立つリーダーに、確かに受け継がれようとしていることが感じられ、嬉しくてならなかった。

伸一は、若草山の山焼きのことから話を進めた。「根がある人は、何があっても必ず栄える。根とは信心です。その根をより太く、強くしていくことによって、福運を吸い上げ、自分のみならず、一家一族をも、永遠に繁栄させていくことができる。

各地域にあっても、異体同心の組織が築かれ、"信心の根"が深く張り巡らされていくならば、三障四魔という炎に焼かれることがあっても、また必ず、若草山のように、青々と蘇生していくことは間違いありません。

人生には、さまざまな試練が待ち受けているものです。しかし、"根がある限り、たとえ、すべてを焼き尽くされても、必ず蘇生できるのだ!"と強く確信し、自身をもって、焦らずに、わが生命に信心の根を、地域に広宣流布の根を、張り巡らしていってください」

「支部制」にあたり、"折伏精神"を、学会の隅々にまで燃え上がらせなければならないと思っていた。"折伏精神"とは友人、知人に、自分に連なるすべての人びとに、あらゆる苦悩に打ち勝つ道を、崩れざる幸福の道を教える慈悲の心である。

何ものをも恐れず、仏法の正義を貫く勇気である。わが生命を磨き鍛え、一生成仏、人間革命を目指す求道、向上の情熱である。学会活動は、弘教をはじめ、座談会、教学の研鑽、機関紙誌の行動推進等々、多岐にわたる。しかし、いずれの活動の目的も広宣流布にあり、その原動力は、どこまでも"折伏精神"である。この精神を失えば、活動は惰性化し、空転を余儀なくされる。周囲の人々に真実の仏法を教え、必ず幸せになってもらおうという一念を燃え上がらせてこそ、すべての活動に魂が込められ、歓喜が沸く。そして、人との触れ合いはそのまま、仏縁の拡大となるのである。

伸一は、広宣流布の勇将である支部長、支部婦人部長、青年部の各部部長には、常に自分と同じ心で"折伏精神"をたぎらせ、あらゆる活動の先陣を切ってほしかったのである。

伸一は、副会長や県長らに厳しい視線を向けて言った。「奈良から仏教が起こったが、結局、僧侶が形骸化していき、仏教本来の精神が失われていってしまった。絶対に、同じ轍を踏んではならない」

伸一は、参加者に笑顔を向けると、快活に呼びかけた。「勝ちましょう!勇気を奮い起こして自分自身に挑み勝つんです。それが、人生のご家庭の、広宣流布の勝利になります。前進しましょう!」

伸一の師子吼は、厳冬の明日香に、勇将たちの闘魂を芽吹かせた。

<勇将の章 終了>

太字は 『新・人間革命』第26巻より 抜粋
0

仏法興隆の新時代を開く明日香文化会館

『新・人間革命』第26巻 勇将の章 285p~

「活動を推進していくための会合では、何を打ち出すのかという、テーマを明確にしていくことが大切です。参加者が、"いろいろな話があったけど、何をすればいいかわからない"と思うようでは失敗です。的を絞ることです。幹部が同じ話にならないように、ある人は体験を通し、ある人は御書を拝して、"なんのための活動家""なぜ、そうするのか"を訴えていくんです。幹部は、納得と感動を与えていくことです。

それには、自分が活動の意味をよく理解し、"さあ、やるぞ!率先垂範だ"という気迫に満ちていなければなりません。それが会合革命の原動力になるんです」

「みんなも、どこにいようが、"自分がいる限り、この地域を平和と繁栄の都に転換してみせる。そのために私がいるんだ!"という決意で進んでいくんです。"私の住んでいる地域は、旧習が深いから、広宣流布は難しい"などと考えてはいけません。その考え事態が敗北の要因なんです」

「まず、必ずそうなろう!勝とう!と決めることです。そして、強情に祈るところから、力が生れるんです。勝利への一念が大事なんです」四国訪問の最後の夜は、勝利への誓いを固め合う、師弟の語らいとなった。

山本伸一は、8日間にわたる四国指導を終え、関西に向かった。「すばらしい文化会館ができたね!仏教文化が栄えた奈良に、日蓮大聖人の太陽の仏法が大興隆していく象徴が、この明日香文化会館です。皆がそう確信し、決意を新たにしていくことが、実は重要なんです。大事なのは人間の心です」

伸一は、日本を代表する仏教建築も多く、他教団の本部等もある奈良県の中心会館は、学会員が「これが私たちの法城です!」と、誇らかに胸を張れるものにしなければならないと考えてきた。ドアの取っ手は「勾玉」の形をしており、大広間の襖は銅板で、天井も美しい格子模様である。また、柱にもゆるやかな膨らみがあり、手の込んだ造りになっていた。

翌日、明日香村など周辺地域を視察した。車中、地域の繁栄を願い、大地に、草木の一本一本に、題目をしみこませる思いで、唱題を続けた。伸一は、深く思った。"奈良県創価学会には、この地に真実の仏法の力をもって新しい人間文化を創造し、社会の融和と繁栄を築き上げる使命がある。仏法興隆の新時代の幕を開くのだ!"

初代の支部長・婦人部長の有田幸二郎・信子夫妻が、功労者として表彰された。幸二郎は、慢性の胃潰瘍と原因不明の神経痛に苦しみ、自暴自棄になり、儲けた分は、酒代と遊興費に消えた。妻の信子は先行きの不安から、様々な宗教を遍歴していた。そんな時、宗教には高低浅深があるとの話を聞き、入会する。夫も一緒にすると言った。勤行するようになって3日後、食べられるようになった。夫妻はその現証に、"この信心は間違いない"と小躍りし、功徳の実感を人に語っていった。

功徳の体験から生まれる歓喜こそ、広宣流布の無限の活力となる。幸二郎の胃潰瘍は克服できたが、神経痛は治らなかった。雪がちらつく日、座談会があったが、幸二郎は、痛みで起き上がることもできなかったが、這ってでもいこうと、妻と壮年に支えてもらい座談会に出席したが、痛みに呻き、動けない。

信子は、自分の横に寝かせ、体験を語り始めた。「皆さん、夫の今の様子を見ておいてください。日蓮大聖人の仏法には、人間のもつ大生命力を湧現させる力があります。だから夫は、医者がサジを投げた病を、信心を根本に克服しようと決意し、痛くとも、笑われても、こうして座談会に出席しているんです。懸命に学会活動に参加しているんです。

私たちは、この信仰で、必ず幸せになってみせます。その絶対の確信があるんです。信心したからといって、今すぐに、何もかも良くなるとは限りません。宿業の軽重、信心の厚薄によります。でも、一生懸命に信心に励んでいけば、夫は必ず全快します」烈々たる確信であった。ほとばしる確信こそが、信仰の核である。

有田夫妻は弘教に行き詰ると、幹部に指導を受けた。いつか、幸二郎の神経痛も起こらなくなっていた。夫妻はまさに二人三脚で、広宣流布の険路を突き進んでいった。夫妻は、当初、"宿命転換のために、信心に励もう!"と必死に頑張った。やがて、教学を学ぶなかで、広宣流布に生きる使命を自覚し、喜びと誇りを感じていった。



太字は 『新・人間革命』第26巻より 抜粋
0

組織活動の進め方

『新・人間革命』第26巻 勇将の章 268p~

山本伸一は、四国研修道場を出発し、高松市福岡町の四国婦人会館を訪問した。この会館はかつて高松会館といって、全四国の中心となってきた建物であった。伸一は、記念植樹し、集ったメンバーと記念撮影をした。その後、高松講堂の建設予定地を視察。山本伸一が来ると確信し、待っていたメンバーと懇談する。

「勅使町」という名前の場所であることから、名前の意義を話し、「大事なことは、何事にも意義を見いだし、希望に、勇気に前進の活力にしていくことなんです。そこに、心の豊かさがあり、強さがある。また、価値の創造があるんです。一念の転換で世界を変えるのが仏法なんです」と励ましを続けた。たこ焼きの屋台が出ているのに気づいた伸一は、皆で食べましょうとどこまでもありのままの伸一だった。

伸一は、溝渕義弘・静恵夫妻の自宅を訪問した。人の良い義弘は、友人の手形が不渡りになり、巨額の負債を負い、人間不信に陥り、不眠、ノイローゼになった。医師であるにもかかわらず、自分の不眠症さえ治せないことも彼を苛み、友人に打ち明けると仏法の話を聞かされた。

仏法における病の起こる原因について聞き、「医学で解決できない病を乗り越える道を説いているのがこの仏法なんです!」との確信に打たれ、入会する。妻の静恵は学会員の身なりが質素であったので、かかわりたくなかった。

義弘は、真剣に勤行、唱題し、2年ぶりにぐっすり眠れた体験から、妻にも入会を勧めたが、彼女の実家は他宗の檀家総代であり、世間体も気にして、学会を批判し、頑なに入会を拒否していたが、「何も知らないで批判するのは人格が問われる」と夫に言われ、活動しないつもりで入会した。

婦人部の幹部から、「何があっても負けない自分になれる」との話を聞き、夫婦で真剣に信仰に励むようになった。医師仲間や親戚、母親から「恥ずかしくて外も歩けない」と泣いて反対されたが、夫が日ごとに元気になっていく姿を目の当たりにした静恵の信心は、揺らがなかった。

義弘は、伸一から激励を受け、真剣に御書を拝した。大聖人が南条時光を励まされた「法華証明抄」の一節を目にした時、全身に震えが走った。時光を悩ませる病魔を、叱責されている箇所である。弟子の病を撃退せんとする大聖人の、烈々たる気迫と確信、大生命力にふれた思いがした。これこそが、医師の魂だと感じた。命を守るためには、強くあらねばならない。

伸一は、21世紀を「生命の世紀」とするために、人間の生命に直接関わる医師など医療関係者の育成に、ことのほか力を注いできたのだ。進歩発展した医学を、真に人類の幸福実現の力にしていくためには、医療従事者が、"人間とは何か""生命とは何か"を説き明かした、生命尊厳の思想哲理を持たねばならない。

ゆえに伸一は、医師のメンバーに大きな期待をかけ、力の限り、励ましを送り続けてきた。それが次第に実を結びつつあったのだ。

伸一は、方面・県幹部との懇談会をもった。多くのメンバーと語り合ったなかで、会合が多いとの声があったことに言及していった。「打ち出し等の会合は、できる限り少なくして、すべての幹部が、活動の現場に入れる時間を多くもてるように工夫すべきです。県として支部幹部の会合を開き、そのあとは、各支部ごとで会合をもって徹底していくという方法もあります。実情にあわせ、好率のよい会合のもち方を考えていくことです。

方面や県で活動のスケジュールを立てる際には、大ブロックやブロックなど、活動の第一線、活動の現場に焦点を合わせて組み立てていくことです。打ち出した活動が、いつどのようにして最前線に伝わるかが、勝敗を決する最大のポイントだからです」

第一線を支え、守るための組織である。活動の進め方についての伸一の話は、極めて基本的な事柄であった。その基本があいまいになることから、活動は空転していく。だからこそ、彼は、基本を徹底して確認しておこうと思ったのである。

「各大ブロックでは、全幹部が集っての協議会と、全会員が参加しての座談会が行われています。さまざまな運動を進めるうえで、会合としては、そこに照準を合わせていくべきです。さらに、会合に参加できない人には、会って伝え、励ましていくーーこれが最も大切なんです。

県としては、支部長会等をもって、活動を発表したつもりでも、大ブロック幹部などの段階で止まっていれば、実際の運動は進んでいません。水面だけが波立っているのを見て、全体が動いていると錯覚しているようなものです。

組織の最前線の一人ひとりが自覚を新たにして、行動を起こしてこそ、本当の広宣流布の前進があるんです。


太字は 『新・人間革命』第26巻より 抜粋
0
カテゴリー


新・人間革命 第30巻 下 / 池田大作 イケダダイサク 【本】


→メルマガで届く 『小説 新・人間革命』に学ぶ
ブログでは 言えないこと

メルマガ『勝利の哲学 日蓮大聖人の御書に学ぶ』