『新・人間革命』第29巻 力走の章 130p~

山本伸一は、21世紀のために、仏法の法理を社会へ、世界へと開き、人類の新たな活路を開かなければならないと、固く、強く、決意していた。

彼は、「恵まれない、最も光の当たらない人びとのなかに、率先して入り、対話していく」ことこそ、一個の人間を大切にする具体的実践であり、それが「即『地方の時代』の先駆け」となると訴えた。そして、その言の通りに、彼も行動を開始したのだ。

22日、群馬県では代表幹部会が行われ、伸一が作詞した県歌「広布の鐘」が発表されたのである。この群馬の歌「広布の鐘」をもって、伸一は、関東のすべての県に、歌を作詞し、贈ったことになる。

23日には、第一回となる関東支部長会が晴れやかに行われた。伸一は、支部長・婦人部長が多くの仏子を預かる支部の中心者として広宣流布の重責を担い、日々、奮闘してくれていることに心から感謝し、その功労を讃えた。

「学会草創期の支部長・婦人部長の功績は実に大きく、その実践は、今もって多くの同志の語りぐさとなっている。皆さんは、広布第二章の初代の支部長・婦人部長です。どうか皆さんもまた、『あそこまで皆のために真心を尽くすのか!』『あれほど情熱をもって行動し抜くのか!』『あの人から本当の信心を学んだ!』と、後々までも語り継がれる、見事な自身の歴史を築いていただきたい」

「広宣流布のために、自分の限界に挑み、殻を破っていくなかで、境涯は大きく開かれていきます。それが、広布の新しき拡大になります。自らの限界を破ってこそ成長があり、力は増すんです。反対に、大きな力を秘めていても、それを使い切っていかなければ力は退化していきます」

さらに伸一は、活動を推進していくうえでの幹部の在り方、注意すべき事柄について、具体的に話を進めた。「支部にあって、日々の活動のなかで、御書を拝していく伝統を築いていっていただきたい。たとえ、一行でも、二行でもよい。皆で御書を拝読し合っていくことが大事です。

次に、壮年の幹部は、婦人部のご家庭に最大の配慮と思いやりをもって接していただきたい。そして、支部の運営は、あくまでも協議会を中心に行っていただきたい。支部も、地区も、常に協議を最重要視し、どこまでも民主的に、皆が納得して信心に励めるようにしていくことが、活動を推進していくうえでの眼目です。

また、幹部は会員の皆さんに負担をかけたりすることがないよう、よく注意を払っていただきたい。人間として自分自身を厳しく律していくなかに仏道修行があり、人間革命があることを知ってください」

物事は、小事が大事である。大事故の多くは、一つ一つの細かい事柄への注意を怠ったことに起因している。小さな配慮を欠いたことから、皆の信頼を失い、それが組織の停滞を招いた事例も少なくない。

幹部には、守秘義務がある。それを、順守していくのは当然です。『わざわいは口より出でて身をやぶる』との御請訓もある。幹部の皆さんは、軽はずみな発言などで、支部員を苦しめることがないように、聡明な対応をお願いしたい。

また、大勢のなかには、、信心利用、組織利用の人もいるかもしれない。会員を守るために、それを鋭く見破り、よく注意していくようにお願いしたい。真の学会員としての道を歩まず、広宣流布のための仏子の集いである学会の組織を攪乱し、社会に迷惑をかけるような人を、看過してはなりません」

何事も、油断し、基本がおろそかになった時に事故が生じる。広宣流布は魔との攻防戦であり、気のゆるみがあれば、そこに魔が付け入ってくる。したがって伸一は、支部長・婦人部長に、油断を拝して、原理原則に徹することを、強く訴えたのである。

彼は、これまでに会えなかった人と会おうと、懸命に時間をつくり、行動していった。そのなかで学会の作詞も続け、静岡県の同志に、「静岡健児の歌」を贈った。


太字は 『新・人間革命』第29より 抜粋
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