『新・人間革命』第29巻 常楽の章 7p~
<新・人間革命 第29巻 開始>
<常楽の章 開始>
対話は、人間の最も優れた特性であり、それは人間性の発露である。語り合うことから、心の扉は開かれ、互いの理解が生まれ、友情のスクラムが広がる。対話はーー励ましの力となる。希望の光となる。勇気の泉となる。生命蘇生の新風となる。そして、人間の心と心に橋を架ける。
1978年(昭和53年)10月10日、山本伸一は、妻の峯子と共に、経済学者で、『不確実性の時代』などの著者として知られる、ハーバード大学名誉教授ジョン・K・ガルブレイス博士とキャサリン夫人の一行を聖教新聞社に迎えた。
語らいは、伸一と博士が、交互に問題提起し、それに対し意見を交換するかたちで進められた。語らいのなかで伸一が、明年にはインドを訪問する予定であることを告げると、博士は、こうアドバイスした。「パンジャブ地方を、ぜひ訪問してください」すかさず、キャサリン夫人が、「南西部にあるケララ州の発展も目覚ましいものがあります」と言葉を添えた。
博士のインドでの大使生活を支え続けた夫人は、驚くほど、現地の事情に精通していた。生活者の視点に立つ女性の眼は、最も的確に、その社会の実像を捕らえる。
彼女は、使用人だけでなく、その家族の面倒もみた。皆から「われわれ全員の母親です」と慕われた。その“子ども”の数は、時には50人にもなった。また、来客の接待、集会、記者会見、晩餐会など、一切を取り仕切った。夫婦での出張もあれば、大使に代わって、急遽、講演しなくてはならないこともあったという。夫人は、子育てもしながら、この激務をすべてこなしてきたのである。
御書には、信念を分かち合う夫と妻のチームワークを「鳥の二つの羽」「車の二つの輪」に譬え、何事も成就できる力だと教えている。
会談に同席していた日本の出版社の社長が、「私からもお伺いしたいことがあります」といって、博士と伸一に質問した。社長の質問は、“南北問題”を解決していくために、日本は何をなすべきかということであった。
博士は、即座に答えた。「日本には、その富の一部を貧しい国に資本のかたちで供与する道義的義務があると思います。それが、日本が途上国に貢献する第一の方途でしょう。第二に、農業による貢献が大事です。山本会長のご意見を伺いたい」
「非常に重要です。ただし、経済次元の物質や技術の一方的な援助をし続けていくだけでは、国と国とが単なる利害関係になったり、援助を“する国”と“される国”という上下の関係になったりすることが懸念されます。また、その国の国民のプライドや、自力性を失わせてしまいかねません。
したがって、相互の信頼関係を築いていくことが不可欠です。そのためには、人間対人間を基調とした、教育・文化の恒久的な交流が必要です。それを忍耐強く、10年、20年、50年と行う以外に永続的な信頼の道は開けないと思いますし、これまでも私は、そう訴え抜いてまいりました」
博士は、「まさにその通りです。全く異論はありません」と賛同の異を表した。
伸一は、尋ねた。「不確実性の時代のなかで確実性を模索していくうえで、いかなる指導理念が必要になるかを、お伺いしたいと思います」博士は、答えた。ーー基本的には、人間の行う努力は、常に修正されていくべきであり、それによって、私たちの人生は、より安全で、平和で、知的なものとなる。そして、その考え方を受け入れること自体が、究極的には一つの指導理念になるのではないか、と。
ガルブレイス博士は、人間はイデオロギーにとらわれてしまうと、現実から目をそらし、思考から逃避して、理路の鋳型にはめて物事を判断するようになることを危惧していた。
伸一は、訴えた。「私は、判断を下していく人間自身が、葛藤を繰り返し、瞬間瞬間、心が移ろう、矛盾をはらんだ不確実な存在であると、認識することが大切だと思います。したがって、その人間を高め、成長を図っていくことが、常に的確な判断をしていくうえで、極めて大事であると考えます。それには、人間を磨き、高める、普遍的な生命哲理が必要不可欠であり、私どもはそれを仏法に見いだしています。
私は、トインビー博士やアンドレ・マルロー氏らと、人類の抱える諸問題について話し合いを重ねてきました。そのなかで、仏法を基調とした精神変革、人間革命の運動こそ、21世紀を開く大河となる思想運動であるとの賛同を得ております」
私は、トインビー博士やアンドレ・マルロー氏らと、人類の抱える諸問題について話し合いを重ねてきました。そのなかで、仏法を基調とした精神変革、人間革命の運動こそ、21世紀を開く大河となる思想運動であるとの賛同を得ております」
太字は 『新・人間革命』第29より 抜粋