『新・人間革命』第23巻 学光の章 131p

夜、伸一は、大学の構内を車で回った。学生寮の近くを通ると、各部屋には、煌々と明かりがともっていた。「通教生は、みんな勉強しているんだね。夜食にパンと牛乳を届けるようにしよう。」
翌日、伸一は、通教生の激励に向かった。

各方面の通教生の代表10人と懇談することにしていた。ブロンズ像の前で、伸一を囲み、立ったまま、語らいが始まった。「このメンバーを『通信使命会』としてはどうでしょうか。何事も、発展していくためには、核となる人たちが必要です。皆さんには、ぜひ、通教生の核となっていただきたい。そして、母校を愛し、母校を守り、発展させていってください。また、まず皆さんが、あらゆる困難を乗り越え、卒業される日を待っています」

通教生たちは、語り合った。「これまで、"経済的に恵まれないために、通教生になった"という思いが強くあった。しかし、今は、むしろ、僕たちこそが、創価教育を体現する使命を担っているんだと思えるようになった。もう闘志満々だ。必ず頑張って、4年で卒業してみせるよ」
人間教育の本義は、一念を転換させ、自分の大いなる価値を目覚めさせることにある。

夏季スクーリングの前期の最終日、「学光祭」が行われた。これは、通教生を慰労し、親睦を深める"夏祭り"として、企画された催しであった。この「学光祭」は、毎年、夏季スクーリング中に行われ、創価大学に学ぶ通教生の伝統行事となっていくのである。

閉講式には、メッセージを託し、奮闘を心から讃えたのである。帰途に就く通教生たちの姿があった。伸一は、急いで車を降りた。"直接会って励まそう!今しかない"瞬時を逃すな。時は再び巡りくると思うなーーそれが、「臨終只今」の決意に生きる、彼の行動哲学であった。

伸一は、メンバーと次々と握手を交わしていった。そして、決意をかみしめるように語った。「私も勉強します。これから、さらに、世界の学者や指導者と、人類の未来のために対談を重ねていきます。学ぼう。学びに学んでいこうよ」伸一の言葉に、通教生たちは粛然とした。その炎のような向学心に、感嘆したのだ。

札幌農学校で初代教頭として教育に当たったクラーク博士は、農学校を去る時、見送りに来た学生たちに「boys be ambitious」との、有名な言葉を残している。クラーク博士の教え子で、札幌農学校の教授も務めた大島正健によれば、クラーク博士は、その言葉に続いて、「like this old man」と語ったという。「この老人」とは、博士自身である。つまり、"自分のように、君たちは大志を抱くのだ!"と叫んだのである。

真の人間教育とは、生き方を通しての、人格的触発によってなされるものだ。ゆえに伸一は常に新しき前進と向上と挑戦を、自らに課し続けていたのである。

通教生たちにとってスクーリングの大きな収穫の一つが、全国各地の学友を知ったことであった。友情という絆を結ぶなかで、個人のもつ勇気が、力が、発揮されるのである。

9月から11月までは、日曜などの休日に行われる秋期スクーリングが実施された。山本伸一は、通教生が集っていることを聞くと、授業終了後、一緒に記念撮影をするよう提案した。そのあと、通信教育を担当している教職員たちにイスを勧め、懇談した。

伸一は、懇願する思いで語った。「通教生は、わが大学の誇りであり、宝です。みんな、苦労しながら学んでいる。そうした人たちのなかから、ダイヤモンドのような逸材が出てくるんです。どうか先生方は、一人ひとりを、心から大切にしていただきたい」

試練に身をさらし、生命を磨いてこそ、人は光り輝いていく。したがって、見方を変えるならば、通教生こそ、自らを輝かせる最高の環境にいるといってもよい。


太字は 『新・人間革命』第23巻より 抜粋