『新・人間革命』第2巻 民衆の旗 p273~


第29回衆議院総選挙が行われた。
結果、自民が300議席を確保し、第二次池田隼人内閣は、長期安定政権の構えを見せる。
一方、社会党も 23議席増やすが、野党全体としては、3分の1を やや上回る程度だった。


山本伸一は、選挙結果を見ながら、日本の政治の行方を憂えた。
それは、中間的な立場に立つ政党が敗退し、あの新安保条約をめぐっての
自社両党の対決の構図が、さらに浮き彫りにされた結果となったからだ。


この総選挙の焦点は、議会制民主主義の立て直しにあったが、
そもそも、この混乱の最大の要因は、自社両党が初めから党利党略に固執し、
本当の意味での討議、審議が行われず、
歩み寄りも、合意も、まったく見られなかったことにあった。


案件について、異なる意見があるのは当然である。
審議の決定は、最終的に多数決によらざるをえない。


それゆえに、党利党略を超えて、国民を第一義とし、
合意を求めての審議を積み重ねていくことが、何よりも重要になる。
だが、この選挙結果で自身を強めた自社両党は、その姿勢を改めそうにもなかった。


そうであれば、国民は政治への不信をますます深めていくことになろう。


山本伸一は、いかなる政党が本当に民衆のための政治を実践しているかを、厳しく見ていた。
彼は「青年は心して政治を監視せよ」との戸田城聖の遺言を、
瞬時も忘れたことはなかった。


学会は、政治の分野にあっても、庶民、民衆の利益と繁栄を第一に考える、人格高潔にして
有能な人材を、地方議会と 参議院に送り出してきた。
人びとの暮らしに直結し、生活の便宜を図る上では、地方議会の果たす役割は大きかったし、
国政を厳しくチェックするうえでは、参議院への進出は重要な意味を持っていた。。


しかし、民衆のための政治の実現を考えるなら、いつの日か、
国政の根幹となる衆議院に、人材を送り出すことも必要ではないかーと、伸一は思った。


ともあれ、政治が守るべき根本は、常に民衆であることを、決して忘れてはならない。


太字は 『新・人間革命』第2巻より抜粋