『新・人間革命』第2巻 「先駆」の章 p36
1960年5月24日未明 南米チリで起きた地震による大津波が
東北、北海道などの太平洋岸を襲った。
死者は全国で139人
被害家屋は 4万千戸あまり、
特に 三陸、北海道南岸で被害が 大きかった。
山本伸一は 早朝から 急いで本部へ向かい、次々と迅速に手を打った。
この時、政府の対応は極めて遅かった。
それは、衆議院で自民党が新安保条約を強行単独可決したことから、
社会党が国会審査を拒否し、国会が空白状態であったからである。
とりあえず内閣に津波災害対策本部を設置することが決まったのは、
津波から三十数時間が経過した25日の昼であった。
だが、国会がその機能を果たしていないために、抜本的な対策は
何一つされなかった。
被災地の人々にしてみれば、迷惑このうえない話である。
今では考えらない遅さだが、
東日本大地震の時も、同じような状況だった。
できたばかりの新政権の 対応が 後手後手にまわり、
対応の まずさが、きわだっていたのを思い出す。
津波自体は自然災害であるが、適切な措置を講ずることができず、
人びとが苦しむのは、人災以外の何ものでもない。
政治家の第一義は、国民を守ることにある。
災害に苦しむ人々の救援こそ、最優先されねばならない。
伸一は、被災者の苦悩を思うと胸が痛んだ。
そして 安保をめぐる党利党略に固執し、民衆という原点を失った政治に、
怒りを覚えるのであった。
伸一は「立正安国」の実現の必要性を、痛感せざるをえなかった。
「立正」とは「正を立てる」、すなわち仏法の「生命の尊厳」と「慈悲」という
人道の哲理の流布であり、仏法者の宗教的使命といってよい。
日蓮仏法の本義は、「立正安国」にある。
眼前に展開される現実の不幸を失くすことが、大聖人の目的であられた。
それは、「立正」という宗教的使命は、「安国」という人間的、
社会的使命の成就をもって完結することを示していた。
そこに仏法者と、政治を含む、教育、文化、経済など、
現実社会の営みとの避けがたい接点がある。
しかし、それは、政治の場に直接、宗教を持ち込んだり、
政治権力に宗教がくみすることでは決してない。
宗教は、人間を鍛え、人格を磨き高め、
社会建設の使命に目覚めた人材を育み輩出する土壌である。
ゆえに学会は、全国民のために政治をまかせるに足る人格高潔な人材を推薦し、
政界に送り出すことはしたが、学会として直接、政策などに関与することはなかった。
新安保条約をめぐって、学会が推薦した参議院議員が
伸一に政策の決定について相談をもちかけると、彼はきっぱりと言った。
「それは、あなたたちが悩み、考え、国民のために決めるべき問題です。
私の思いは、ただ全民衆のため、平和のために、戦ってほしいということだけです」と。
太字は 『新・人間革命』第2巻より抜粋
1960年5月24日未明 南米チリで起きた地震による大津波が
東北、北海道などの太平洋岸を襲った。
死者は全国で139人
被害家屋は 4万千戸あまり、
特に 三陸、北海道南岸で被害が 大きかった。
山本伸一は 早朝から 急いで本部へ向かい、次々と迅速に手を打った。
この時、政府の対応は極めて遅かった。
それは、衆議院で自民党が新安保条約を強行単独可決したことから、
社会党が国会審査を拒否し、国会が空白状態であったからである。
とりあえず内閣に津波災害対策本部を設置することが決まったのは、
津波から三十数時間が経過した25日の昼であった。
だが、国会がその機能を果たしていないために、抜本的な対策は
何一つされなかった。
被災地の人々にしてみれば、迷惑このうえない話である。
今では考えらない遅さだが、
東日本大地震の時も、同じような状況だった。
できたばかりの新政権の 対応が 後手後手にまわり、
対応の まずさが、きわだっていたのを思い出す。
津波自体は自然災害であるが、適切な措置を講ずることができず、
人びとが苦しむのは、人災以外の何ものでもない。
政治家の第一義は、国民を守ることにある。
災害に苦しむ人々の救援こそ、最優先されねばならない。
伸一は、被災者の苦悩を思うと胸が痛んだ。
そして 安保をめぐる党利党略に固執し、民衆という原点を失った政治に、
怒りを覚えるのであった。
伸一は「立正安国」の実現の必要性を、痛感せざるをえなかった。
「立正」とは「正を立てる」、すなわち仏法の「生命の尊厳」と「慈悲」という
人道の哲理の流布であり、仏法者の宗教的使命といってよい。
日蓮仏法の本義は、「立正安国」にある。
眼前に展開される現実の不幸を失くすことが、大聖人の目的であられた。
それは、「立正」という宗教的使命は、「安国」という人間的、
社会的使命の成就をもって完結することを示していた。
そこに仏法者と、政治を含む、教育、文化、経済など、
現実社会の営みとの避けがたい接点がある。
しかし、それは、政治の場に直接、宗教を持ち込んだり、
政治権力に宗教がくみすることでは決してない。
宗教は、人間を鍛え、人格を磨き高め、
社会建設の使命に目覚めた人材を育み輩出する土壌である。
ゆえに学会は、全国民のために政治をまかせるに足る人格高潔な人材を推薦し、
政界に送り出すことはしたが、学会として直接、政策などに関与することはなかった。
新安保条約をめぐって、学会が推薦した参議院議員が
伸一に政策の決定について相談をもちかけると、彼はきっぱりと言った。
「それは、あなたたちが悩み、考え、国民のために決めるべき問題です。
私の思いは、ただ全民衆のため、平和のために、戦ってほしいということだけです」と。
太字は 『新・人間革命』第2巻より抜粋